カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス生活の日記だったけど、今は大阪にいます。

【読んだ】望月優大『ふたつの日本』

『ふたつの日本』読了。これも年始に日本で「今読まねば」と買い込んだうちの一冊。私はもともと人や文化の移動に関わる仕事をしている上に、今は海外赴任によって「外国人労働者」の身となっている。日本における「移民」の現状認識のために書かれた本書は…

紙魚

部屋にシミおった! かわいい 古雑誌を持ち上げたらぽとりと落ちてきた。まさに小魚のごとく平面を走り回るスピードは「紙魚」の名にふさわしい。英語では銀色に光る鱗粉に着目して、Silverfish―銀魚と呼ぶそうだ。どちらも風流な名付けで、どこの国でも文人…

【読んだ】遠藤公男『ニホンオオカミの最後』

去年出版され、今年の年明け頃に生き物界隈で話題になっていた『ニホンオオカミの最後』。正月の帰省のときに八重洲ブックセンター本店で買ったまま積んであった。 著者は東アジアを股にかける動物ノンフィクション・児童文学の書き手。知らなかったけど略歴…

にわかが「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見た感想

ネットフリックスでTVアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見た。京都アニメーション制作。近世ヨーロッパ風の世界で、人間兵器として育てられた少女が、戦争終結後、代書屋に就職し、顧客や同僚との関係を通じて人間性を回復、成長していく物語だ…

ときどき手紙を書きます

ロサンゼルスに来てから、手紙を書くようになった。筆まめ、とは言えないがひと月に一度くらいはペンをとってみることにしている。しばしばもっと日にちが空いてしまうけど。東京で暮らしていたときはごちゃごちゃと気を引くあれこれが多く、そんな習慣はな…

自分をほめるだけの日記

近々テント山行の予定があるので、今日はそのトレーニングで中ぐらいの山に登るつもりだった。 朝6時に起き、眠い目をこすりながら昨日の残りを温めて食い、速乾性の下着に着替えたところで、ようやく認識した。こりゃいかん、めっちゃ疲れている。起きたば…

ロサンゼルスでミョウガもらった

知り合いからミョウガのおすそ分けをいただいた。庭でたくさん採れるそうで、どっさりいただいた。外国でミョウガのおすそ分けをもらうほど嬉しいことがあるだろうか?(いや、ない) 私はミョウガがとても好きだ。一生食事がミョウガご飯でもいいくらいあの…

文学翻訳について

ずいぶん前、とあるコンベンションで「Korean Literature Now」という広報誌をもらった。韓国文学翻訳院という韓国の政府系機関が出しているもので、非常に充実した内容だ。人気作家のインタビューや、詩の掲載、文学研究者の寄稿など、手に取りやすい薄さな…

自動車都市での事故予防について

夕方帰り支度をしていたら、けたたましいブレーキ音と衝突音がオフィスの中まで響いてきた。なんだなんだと野次馬根性で外へ出て様子を伺うと、フロントのひしゃげたオープンカーが交差点の真ん中で止まっていて、運転手らしき人がうろうろしている。深刻な…

久しぶりに再開します

3ヶ月放置してしまった。その間ずるずると書かない日々が過ぎていっただけで、わりと元気にしていた。休みをとってヨセミテ国立公園に行ったり、帰国して瀬戸内国際芸術祭を見物したり、ドイツを旅行したりしていた。あとちょこちょこカリフォルニアの山を歩…

沢田研二のソフトパワーと現代アジア

出張など続いてまたしばらく更新できず。 今日ようやく出張が終わってロサンゼルス空港まで帰ってきた。家までライドシェアを拾ったら運転手は香港出身のおじさんだった。アメリカに来てもう25年も経つという。大先輩である。 私が日本人とわかると「ハジメ…

激辛の国アメリカ

タイトルの通りアメリカちゅうところは激辛の国である。来るまでぜんぜんそんなイメージはなかったが、油断しているとヤられる。さっき人と飯食ってるときに何気なくタコスをパクついたら中に生のハバネロが入ってて死んだ。食い物に生のハバネロを入れると…

週末の宮部みゆき

宮部みゆき『模倣犯』を読んでいたら週末が終わった。 ハードカバー上下巻1400ページほどを一気読みしてお腹いっぱいである。半年ほどの連続殺人事件の経過を違う視点から何度もなぞる構造になっているのと、あらゆる脇役に物語が描き込まれているのでとにか…

【観た】三池崇史「FAMILYファミリー」

三池崇史「FAMILYファミリー」2001年 岩城滉一、木村一八、加勢大周というワルい3人がマフィア、自衛隊、殺し屋の3兄弟を演じる話。他にも悪そうな人がいっぱい出てきて悪そうな遠藤憲一が女性をひどい目にあわせたりして3兄弟がキレるみたいな特に深みはな…

【読んだ】『照葉樹林文化』『暗黒神話』

上山春平編『照葉樹林文化―日本文化の深層』を読んだ。これは上山(哲学)が音頭をとったシンポジウムの記録で、中尾佐助(植物学)、吉良竜夫(生態学)、岡崎敬(考古学)、岩田慶治(文化人類学) という錚々たる京大閥の面々が顔を揃えている。稲作伝来…

【読んだ】今日マチ子『いちご戦争』

読んだというより味わったという感覚だ。漫画の形式を借りた、これは詩だ。 果物やお菓子の森でカーキ色の服を着た無個性な少女たちがうつ伏せにのびている。飛び散るいちご、すいかの汁、腹部を貫くポッキー。この上なく淡くかわいいペンの線と水彩でこの作…

【読んだ】リーヴ・ストロームクヴィスト『禁断の果実』

スウェーデン発の「フェミニズム・ギャグ・コミック」。邦訳を手がけた編集者の山口さんのSNSから毎日情報が流れ込んでくるのでこれは読まずばなるまいと、年末の帰省ついでに東京国立は増田書店で買ってきた。ロサンゼルスに戻ってしばらく他の本と一緒に積…

【観た】甲鉄城のカバネリ

アニメ「甲鉄城のカバネリ」を観た。アマゾンプライムビデオでanimationと検索すると必ず出てくるやつ。絵面がおどろおどろしいのと、英語版だと「KABANERI」というタイトルが「ハバネロ」みたいでニュアンスがよく分からなくて後回しにしていたが、観てみた…

【読んだ】谷崎潤一郎『春琴抄』

これまで谷崎潤一郎は教科書に載っていた『陰翳礼讃』くらいしか読んだことがなかった。去年たいへん面白く読んだ『日本語が亡びるとき』で水村美苗が日本近代文学の重要性をこれでもかと強調していたこともあり、積ん読にしていた『春琴抄』を読んでみた。…

パサデナ堪能(山、美術館、本屋、映画館)

充実した土曜日だった。盛り込みすぎて詳しく書けないけど、時系列順に以下の通り。 1.ハイキング〜Echo Mountain お世話になっている山歩きグループの皆さんと、ロサンゼルス近郊のEcho Mountain(968m)へ。一年ちょっとの間にこれで三回目のすぐ行けて…

【読んだ】小倉美惠子『オオカミの護符』

武蔵国出身者として非常に興味深い本だった。実家の土蔵に貼られた一枚の護符から、文書の記録や古老のインタビューを頼りに辿りに辿って関東一円の山岳信仰を掘り起こし、神秘と驚異相半ばしたニホンオオカミに向き合った先達の姿に思いを馳せるプロセスが…

外国語と体調

火曜日の食あたりから三日ほど、絶不調でダメにしてしまった。職場には一日で復帰したものの、頻繁にトイレに立つので集中できやしないし、時差ボケの調整も大失敗なので眠いこと眠いこと。新学期のスタートダッシュを決めてライバルに差をつけるはずだった…

食あたりでダウンしてました

昨日未明から食中毒のような症状で、トイレと布団の往復を20時間ほど続けていた。ひたすら休んでいたらどうやらおさまってきたけど、まだ胃腸がキュルキュル動いて落ち着かない。話に聞くノロウイルスの症状ほどではなかったけど、一時は上からも下からも水…

【読んだ】隈研吾『自然な建築』

冒頭、「二十世紀はコンクリートの時代であった」と隈研吾は言う。部材の劣化や素材の性質を無視して、自由かつ安価かつ即時的に建築家のイメージを具現化できるコンクリート造という手法が、地縁・血縁、すなわち時間的なつながりから人々を切断していった…

2019年の抱負

昨日、日本からロサンゼルスに帰ってきた。年末年始は家族や友人と過ごすことができて、とても良かった。慌ただしくあちこち行っていて充分とは言えないまでも、大切な人たちとゆっくり話し、自分の来し方行く末を見つめ直すという、実に年末年始らしい時間…

2018年に読んだもの振り返り③(終)『宮本から君へ』

すでに2018年は終わってしまってマヌケだが、振り返りをもう一本だけ。 本をあまり読まなかったかわりに、マンガはかなり読んだ一年だった。食わず嫌いだったKindleを導入したのをきっかけに、300冊は読んだのではないかと思う。劇画狼さんの紹介を参考に読…

2018年に読んだもの振り返り②『日本語が亡びるとき』

今年読んだものセレクション第二弾は、水村美苗『日本語が亡びるとき』。ここ数年ちょこちょこかじってきた文化論の中でも、いちばん心揺さぶられた。感情を動かされたのは小説家としての著者の腕によるかもしれないが、別にセンチメンタルな叙述に終始する…

2018年に読んだもの振り返り①『アメリカ自然思想の源流』

今年はあまり本を読まなかったが、いくつか印象に残っているものはある。 まず柴崎文一『アメリカ自然思想の源流』。一時期は毎週のようにアメリカの自然に遊んでいた私にとって、そうそうまさに今それが知りたいのだというタイトルである。米国立公園の仕組…

アニメ版バナナ・フィッシュをアメリカで観る

最近の楽しみはアマゾンプライムでやっている「BANANA FISH」のアニメである。週に1話ずつアップされるのを、シャツにアイロンをかけながら観ている。とても原作を大切にしたつくりで、内容はだいたい覚えているのにハラハラドキドキさせられる。何よりアッ…

【読んだ】向田邦子『思い出トランプ』

向田邦子の短編集を読んだ。表題の通り、トランプと同じ13編が収録されている。 向田邦子の作品を読むのは初めてだ。登場人物は皆ぬぐえない過去の暗い思い出や、後ろめたさを引きずりながら、どうにか生きている。あまり大きな事件は起きず、なんとなく昔あ…