カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

アメリカの光と影、雑感

 アメリカに来る前に本多勝一の『アメリカ合州国』という本を読んだ。本多はこの本で、アメリカの光と闇は不可分であり、両方合わせてこの国の本質を形作っているということを言った。自由と民主主義の光に対して、貧富の差や人種差別の闇は、影のように付き従っているのではなく、闇なくしては光もまた存在し得ない表裏一体の関係にあるということである。

 この見立ては本多の専売特許でもないが、ともかくこの本のことを折に触れて思い出す。現在ロサンゼルスにはホームレスがあふれており、私のアパートの前でも、道端に汚れたテント住居が並んでいる。どこに行っても小便臭くて気が滅入る。同じ街で数万人の人が病と空腹に耐えて路上で寝ているときに、なぜ自分はメシが美味いだの不味いだの真剣に論じているのか、ふと分からなくなることがある。もちろん厳しい状況に置かれた人に自分が何をできるのかという問題と、自分の快楽を追求するかどうかという問題は、互いに独立だ。したがって、そこは悩むポイントではない。悩むポイントではないのだが、肌感覚としては一つの視界に並存する貧富の差に、やはりめまいを感じざるをえない。

 ロサンゼルス市当局も手をこまねいているわけではなく、最大の課題の一つとしてホームレス問題の解決を挙げている。ローカルなラジオを聴いていると、市役所の担当者が出てきて、シェルター増設等の施策について解説している。2028年のオリンピックもにらみ、公的な予算もものすごく増強されるそうだ。ホームレス支援のNPO等も盛んに活動しており、それはそれでアメリカ社会の強さとして素晴らしいと思うし、近い内に活動に参加してみたいと思う。

 しかし、と思う。このホームレス問題の闇が仮に解決するとして、そのとき闇と不可分であるアメリカの輝かしい光はどうなっているのだろうか。貧困と差別なくしてアメリカはアメリカたりうるのか、もとい、貧困と差別がなくなるほどの変化を飲み込む用意は、この社会にあるのか。

 このブログはいつも書きながら考えているのだけど、今日もアメリカのことを書いているようで、なにかアメリカだけの話ではなくなってきてしまった。

 

アメリカ合州国 (朝日文庫)

アメリカ合州国 (朝日文庫)