カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス生活の日記だったけど、今は大阪にいます。

【映画】Eighth Grade【中二はつらいよ】

 先月はいろいろあって全然ブログに向かえなかった。というか途中からアメリカを離れていたので、ブログタイトルの「カリフォルニアの本と虫」が体を成していなかった。いろいろが終わってアメリカに戻って、一週間経つが、時差ボケとカルチャーショックの再克服で、まだ少し心身がふらついている。

 

 こんなふうにふらついているときは、いつもと違うことをしてしまうもので、今日はこちらで初めて映画館で映画を観た。たまたま職場近くのショッピングモールに用事ができたので、ついでに何かできないかとモールのウェブサイトを見てみたら、ちょうどいい時間に「Eighth Grade」という映画をやっているらしい。なんか知らんけどこちらの「8年生」、日本で言うと中1〜中2くらいの思春期の少女が悩む映画らしい。「エイス・グレード」という名前でWikipediaの記事*1もできている。先月公開されて、けっこうな評判らしい。気晴らしに見てみよか。

 パパっと時間と座席を指定したら、スマホにチケットのQRコードが送られてくる。新作の値段は日本とあまり変わらない感じ。

 で、映画。冒頭のシーンからやられた。主人公の女の子が大写し、カメラに向かって何か喋っているのだが、一瞬で伝わる、ものすごいイケてなさ。こ、こいつイケてない…!上映直前かなり眠かったのだが、この冴えないやつを冒頭にぶつけてくる映画で寝ているわけにはいかない。

 冒頭に続く展開も、とてもいたたまれなかった。ああ、思春期ってこんな感じだったよな、つらかったよなというのを思い出させられまくる。自分のことを誰も正しく見てくれていない、そして当の自分も自分のことなんか分かっていないし、それゆえに正しく自己表現することもできない、息苦しいあの感じ。

 主人公が不器用に頑張って、空回りした結果、器用に楽しくやってるやつらに白い目で見られるシーンが(いっぱい)あって、そこでアメリカ人のお客さんがゲラゲラ笑うんだけど、私は可哀想でとても笑う気にはなれなかった。アメトークの「中学の時イケてない芸人」に共感する人はうまく入り込めると思う。

 自分の過去と照らし合わせて感情移入した一方、この映画で描かれている、スマホ・ネットの姿は、私が子供のときはなかったもので、これもまた面白かった。面白いというか恐ろしかった。自意識がぐわーっと膨張する時期に、SNSなんていう自意識増幅装置に接続されたら、どうなってしまうんだろうか。主人公のケイラも自己認識の虚像と実像の間でもみくちゃになって、見ている方はハラハラする。

 ラストシーン、アメリカの中学校の最終学年「Eighth Grade」を終えて、高校に踏み出すところまでの収束のさせ方もとても良い。現代アメリカをリアルに描きながら、国や時代を超えた普遍性を持つ作品だと思う。お近くで公開された際にはオススメしたい。特に中学あまり楽しくなかった人(映画好きはたいていそうかな)。

 


Eighth Grade Trailer #1 (2018) | Movieclips Indie

*1:ちなみにWikipediaの記事は英語記事からの翻訳と思われる、あらすじ部分のニュアンスがちょっと微妙。