【読んだ】向田邦子『思い出トランプ』
向田邦子の短編集を読んだ。表題の通り、トランプと同じ13編が収録されている。
向田邦子の作品を読むのは初めてだ。登場人物は皆ぬぐえない過去の暗い思い出や、後ろめたさを引きずりながら、どうにか生きている。あまり大きな事件は起きず、なんとなく昔あんなことがあったなあなどと思い起こしながら、中年の冴えない日常を過ごす。そういう寂しさや、あるいは強かさが、たしかに描かれていて、深い。
私にとって向田邦子を褒める人といえば、爆笑問題の太田光で、いつかテレビでひどく熱く語っていたのが印象に残っているが、ようやく読んでみると、たしかにそれだけのものがある。
解説で水上勉が、小説家志望の徒は、この本から2,3編書き写してみるがよかろうと言っているが、その通り、物書きの模範になりうる本だと思う。
ブックオフでこんな本が気軽に買えるロサンゼルスの環境に感謝である。