カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス生活の日記だったけど、今は大阪にいます。

2018年に読んだもの振り返り①『アメリカ自然思想の源流』

 今年はあまり本を読まなかったが、いくつか印象に残っているものはある。

 まず柴崎文一『アメリカ自然思想の源流』。一時期は毎週のようにアメリカの自然に遊んでいた私にとって、そうそうまさに今それが知りたいのだというタイトルである。米国立公園の仕組みに日々感心して、アメリカが自然保護の一大拠点だということはなんとなく知っていても、考え方の底に何があるのかは全く不勉強だったので、興味深く読んだ。

 米国自然思想の萌芽として、最初に19世紀の鳥類学者・画家のオーデュボンの活動が取り上げられる。続けて思想家としてのエマーソンと、エマーソンの影響を受けながらも、より自然そのものへ関心を向けたソローが対比される。そしてソローが記述した、人里近い自然としての「フロントカントリー」に対し、自然保護の父として知られるミューアヨセミテやアラスカという人跡未踏の地から掘り出してきた「バックカントリー」の思想が追加されていく。

 オーデュボン→エマーソン→ソロー→ミューアという流れが、門外漢にも非常にわかりやすい。アメリカ人と自然との関係について興味を持っている人への入門書としてとても良い。じっさい私は渡米前に岩波文庫のソロー『森の生活』くらい読んでおこうと思って(文章が長くてくどいので)いっぺん挫折しているのだが、この本を読んだ後、ミューアのエッセイを手にとったら英語なのにも関わらずけっこうスラスラ頭に入ってきた。

 たしか御茶ノ水を散歩しているときに明治大学の購買でテキトーに買ってきたのだが(著者は明治大の先生)、赴任地への知的水先案内としてとてもありがたい本になった。

 

つづく。(たぶん)