カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

【読んだ】隈研吾『自然な建築』

 冒頭、「二十世紀はコンクリートの時代であった」と隈研吾は言う。部材の劣化や素材の性質を無視して、自由かつ安価かつ即時的に建築家のイメージを具現化できるコンクリート造という手法が、地縁・血縁、すなわち時間的なつながりから人々を切断していったグローバリゼーションを支える普遍的建築として世界中に広がったのが、二十世紀という時代であったという。

 『自然な建築』は、そのようなコンクリートの時代が見落としてきた自然素材の意義を見つめ直し、現代的な建築に取り入れてきた著者の作例集である。また、それぞれの作品に通底する思想についての解説書でもある。

 私がこの本を購入したのは、アメリカで出会ったある日本人建築家が「日本の建築についての入門書は隈のあの本が良い」と教えてくれたからだ。(だったと思う。近頃記憶が曖昧で困る。まあともかく買った)

 そして積ん読にしていたこの本を私が手にとって読んだのは、先日訪れたオレゴン州の「ポートランド日本庭園」で彼の設計による建物(文末写真)を実際に見たからだ。アメリカ人の係員に「ここは有名なケンゴ・クマが建てたのですよ」と言われても、建築に無知な私は正直ピンとこない。ケンゴ・クマとキンゴ・タツ*1の違いも最近まで分かっていなかったくらいで、木や草をうまく取り込んだそのオシャレな建物を目の前にしても、「は〜なんかいい感じですねえ」くらいの感想しか浮かんでこない。せっかく実物を見たのにこれではもったいないと思って、帰宅後この岩波新書のページを開いた。

 読んでみて、とても良かった。嗚呼あれはそういうことだったんですね、と建物を見た記憶と照らし合わせて理解を深めることができた。それだけでなく、「意図をもって建築をする」ということがどういうことなのか、素人にも分かるように易しく書いてあるのがまた良い。この本からもらったパースペクティブは、隈研吾だけでなく、他のあらゆる建築を見るときにも手がかりにすることができそうだ。私のような建築音痴にぜひ勧めたい。

 

 ところでこの記事を書きながらWikipediaの「隈研吾」作品一覧を読んでいたら、知らぬ間にけっこう彼の作品にお世話になっていた。というか、この年始の帰省だけでも、銀座の歌舞伎座ビルと丸の内のKITTEビルに行っている。知らぬ間にいろいろつながっているものである。おそるべし。

 

 

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ポートランド日本庭園のCultural Village。レクチャーや研修のできる講義室、ショップ、事務室等を備える。隈研吾設計。

 

 

自然な建築 (岩波新書)

自然な建築 (岩波新書)

 

 

 

*1:辰野金吾は東京駅を設計した人で百年前に死んでます。隈研吾は存命で現役バリバリ。