カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

激辛の国アメリカ

 タイトルの通りアメリカちゅうところは激辛の国である。来るまでぜんぜんそんなイメージはなかったが、油断しているとヤられる。さっき人と飯食ってるときに何気なくタコスをパクついたら中に生のハバネロが入ってて死んだ。食い物に生のハバネロを入れるときにはメニューに明記してでっかいドクロマークでも付けておくのが人としての当然の流儀であるだろうなどと考えるのはまさに平和ボケの見本というもので、ふふ、ほんのスパイスですよ、めしあがれ、といった体で見えないようにハバネロを埋めておくのがこちらの流儀である。母国にいるときのようにのんきに構えていてはいけない。ここは外国だ。エビとアボカドをトウモロコシ粉の薄焼きで挟んだ素朴な食い物を食うときでも、ゆめ危機管理の気構えを忘れてはならぬ。

 アジアで激辛といえばまず韓国、そしてタイ、中国の四川といったあたりが思いつくが、そもそものところをよく考えれば唐辛子というものがそれら激辛王国に伝わった経路は、歴史上みな必ずアメリカの隣国メキシコにつながっている。隣国どころかロサンゼルスを含めたカリフォルニア南部はかつてメキシコ領土だったくらいであるから、世界の激辛文化の本家本元に非常に近しい位置にあるといえるわけである。

 ありがたいことに、国際都市ロサンゼルスでは手軽にいろんな国の料理が楽しめる。しかし、テーブル備え付けの香辛料を使うときには注意しなければならない。いかに料理が本場風でも、辛味ソースや唐辛子フレークだけはメキシコ基準というか世界基準でアップグレードされているおそれがあるからだ。七味や柚子胡椒みたいな感覚で料理にバサバサ入れるとえらい目に遭う。

 これは半分メキシコみたいなカリフォルニアやテキサスだけの話ではなく、ルイジアナなどの深南部というあたりでもまた別の激辛料理が発達しているし、それらが全米に拡散しているのでどこに行っても辛いものに出くわすリスク(チャンス?)はなくならない。タバスコもデスソースもアメリカ発祥であるし、そういうグローバルブランド以外にも地酒のごとく各地にローカルのホットソースメーカーがあり、スーパーの売り場にはホットソースだけでものすごい品揃えが見られる。

 もちろんここは多様性大国でもあるからして、なにもかも押しなべて一様に辛いということは全くないのだが、辛いものはもう頭の芯がビリビリ痺れるくらい辛い。そして「激辛料理」と銘打っていなくてもあまり警告なくいきなり辛い。

 さっきタコスに混じって食ってしまったハバネロはまず舌を焼き、次に脳味噌をギュッとしびれさせて(しばらくガンギマリの状態になった)、3時間経った今でもふつふつと胃の中で存在感を主張している。

 明日トイレ行くのが怖い。