カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

【観た】ロサンゼルスでポン・ジュノ特集

 近くでポン・ジュノ監督作品の特集をやるというので、木曜、土曜と観てきた。「グエムル-漢江の怪物-」「母なる証明」「オクジャ」「殺人の追憶」の4本。

 ロサンゼルスで様々な上映プログラムを運営しているAmerican CinemathequeというNPOによる上映だった。このNPOはハリウッドのEgyptian Theatreと、サンタモニカのAero Theatreという2つの映画館を持っていて、今回どちらも行くことができた。大画面でフィルムを映すというコンセプトでやっているところで、雰囲気がとてもよかった。開始時間から延々15分PRを見せられたりしなかったし。

 

 プログラムは4日連続で、そのうち2回も監督本人が来るらしかったけど、あいにくどちらも仕事の都合がつかず。初日は「グエムル」と「母なる証明」の2本立て。ハロウィンで浮かれるハリウッドまで観に行った。

 実はこの2本は前に観たことあった。観るまで忘れてた。「グエムル」は大学の朝鮮語の先生が「社会風刺を含んで面白い」と勧めていたのは覚えている。それを聞いてビデオ屋で借りたのだったか、実家のBS放送で観たのだったか。今回もう一度観たら、米軍による化学汚染、民主化世代の経済的停滞、ソウルのコンクリ建築の冷たさなど、重要なモチーフがよりくっきり見えてよかった。あとペ・ドゥナがジャージで矢を放つ姿が良すぎる。

 「母なる証明」はオープニングで一面のススキ野原でふらふら踊り始めるキム・ヘジャ(役名:母)がとにかく強烈で引き込まれる。ストーリーが二転三転するサスペンスなのだが、すべて綺麗に忘れていたので初見のように楽しめた。斜面にびっしり貼り付いた貧しい家々の間の迷路のような小路が象徴的。

 

 今日土曜日はサンタモニカの映画館にて2本立て。

 「オクジャ」はCGにより作り出された架空の巨大哺乳類と少女が心通わせる話。2017年発表。Netflix専用の作品ということで、取り扱いについてカンヌ国際映画祭が揉めたというエピソードがある。動物と少女の関係は「あ、これトトロのあのシーン」とか「これはナウシカ王蟲だな」とか明らかに分かるオマージュが目立つ。監督本人も宮崎駿の影響を言及しているらしい。ただ、他の作品に比べると面白さは一歩劣ると言わざるを得ない。巨大生物を狙う多国籍企業と、それを守ろうとする動物愛護団体(実在の過激組織)が出てきて、後者は主人公の少女に協力するというストーリー。多国籍企業が悪いのはそれは悪いんだけど、動物愛護団体の方もそれはそれで行動原理が独善的で、見ててイライラするのだ。劇中で提起された問題はほとんど放置されたまま終わるし。

 「殺人の追憶」は超ヒット作ながら、なんとなくこれまで縁がなかった作品。ビデオ借りたのに忙しくてそのまま返却したりとか。そんで、これはもうむちゃくちゃ面白かった。ポン・ジュノ監督の長編2作目ということだが、今回観た4本の中でダントツにしびれた。農村の泥と原っぱの上を風がびゅうびゅう吹いている感じとか、激しい雨、貧しい街の出口のない感じとか、「母なる証明」の描写の原型が感じられる。これもずっしりとした「終わってない感」が残る映画だが、「オクジャ」と違ってとても効果的にラストが映画のテーマを引き締めている。これはすごい映画だ。

 

 ということで、観た中では「殺人の追憶」がベスト。観れなかった作品(スノーピアサー、パラサイト等)もそのうち観たい。いずれの日もかなり客が入ってたようで、他にも映画のイベントが集中する季節なのに相当な人気だと思う。正直なところポン・ジュノという名前だけ知っていながらどういう監督かはよく分かっていなかったので、まとめて観ることで良い勉強になった。こういう名画上映プログラムは探せばあちこちでやっているので、これからはもっと足を運んでみたい。

 

 

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わくわく