年末年始のできごと
年末のなんだかんだで更新が切れてから一ヶ月たってしまった。肩慣らしに「なんだかんだ」を振り返ってみたい。
まず、クリスマス前に若い友人が訪ねてきてくれた。三十路そこそこの私が若いというのだからものすごく若い、十代の人だが、「後輩」と呼ぶのもおこがましいので友人だ。日本人だが、自分の選んだ道、アメリカで頑張っている。めりめり音を立てて成長している様子をうなずきながら聞き、自分も洗われるような刺激を受けた。
そんでその人と別れて家に帰る車の中。The Clashのライブアルバムを聞いていたら天啓が降りてきた。否、自分の中からふっと浮き上がってきた。俺がこれまでやってきた色々なこと、これから一生かけて続けたいこと、一言でいうとこれだ、というフレーズだ。それが何かということを書いているとまたエントリを結べなくなるので先送りにするけど、近年まれな悟りを得た。そんな仕事納めの夜であった。
それから徹夜で荷造りしてすぐタイに飛んだ。乾季で観光には最適と聞いていたが、バンコクの気温はロサンゼルスと比べても20度くらい高くて参った。タイに住む人達は、めちゃくちゃ涼しいやないかいと言っていた。暑いので部屋にこもって、十二国記の新刊をひたすら読んでいた。乗り継ぎの関西空港で見つけて、こらえきれずに買ってしまったものだ。(4分冊で重かった) 練りに練られたとんでもない長編だったが、これについて書いているとキリがない。これもまたの機会に。
バンコクから、隣国ラオスのルアンパバーンに飛び、象に乗るなどもした。分厚い皮膚越しに触った象の頭骨や肩の骨は、本当にでかかった。生物の体の一部というよりは、「建材」みたいな何かだった。こんな偉大な存在が同じ哺乳類だなんて。
ラオスは聞いていたとおり、のどかな国で、たった2泊の滞在だったけど大変よかった。美しい滝を見たり、変な服を買ったり、日暮れ時の屋形船でカゲロウの大群に突っ込んだり、した。ちなみに2泊のうち丸一日は食あたりにより、上からも下からも水分を噴射する一個の機械と化していた。つらかった。
吐き気と頭痛でヘロヘロになりながらタイに戻り、駐在員の人にかまってもらったりしつつ、豊かな熱帯雨林で名高いカオヤイ国立公園にも遊びに行った。乾季なので虫はあまりいなかったが、親切なガイドさんのおかげでテナガザルやオオハシ、アジアゾウなどを観察することができた。密林の凄味の一端を味わったので、また日を改めて再訪したい。
年越しの瞬間は、M-1のぺこぱの漫才に興奮しているうちに過ぎた。ロサンゼルスにいるせいで最近ますます、他人のおかしな点をあげつらってツッコむお笑いが駄目になっていたのだけど、あれはすごかった。従来のお笑いを前提としながら、同時にそれに異を唱えていくあのスタイルは、日本の芸能界の中でなかなかスリリングな道行きになると思う。しかし、ぜひとも活躍してほしい。また、仮にいろんな要因でテレビの舞台に定着できなかったとしても、あのM-1の舞台ひとつだけで、人々の記憶には残っていくだろうと思う。
年始にさらに数日タイを観光した後、またフライトを乗り継いでロサンゼルスに帰ってきた。行きも帰りも日本の空港を経由したけど、懐かしい感じがぜんぜんしないのが面白かった。むしろ少しエキゾチックに感じた。私がやれやれと帰ってくる場所は、今ロサンゼルスなのだ。私はこれまで人生であんまり東京を離れたことがなかった。自分という生き物は2年で新しい場所をホームと認識するようになるんだな、というのが新しい発見だった。
いろんなことがあったけど、ようやく通常モードの生活に戻ってきた。またちょこちょこ仕事して山に登って、合間に好きなことを書き散らかしていこうと思う。
おわり。