カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

なんちゃって勉強のすゝめ

 3日ほど前から、日本の大学のオープンアクセスの講義動画をちょこちょこ見始めた。外出自粛に合わせてネットでまとめられていたものだ。

 まだどれがいいとか悪いとか比べるほどではないけど、北大のと東大のを2コマずつ見た。どっちも学際的なオムニバス講義で学部の入門的な科目。これが実に面白い。「大学の授業っちゅうのは、いい大人が受けたらたいてい面白いもんだ」とツイッターで言ってる人がいたけど、その通りだと思った。

 私は学生の時「遅刻してきて、寝る」という最悪の学生で、たぶん先生にとっては講義に来ない学生よりも目障りだったと思う。生活が不摂生だったのもあって、内容が面白いかどうかにかかわらず、全然起きてられなかった。あそこまでとにかく眠いというのは、今から思うとなんらかの精神的な逃避行動だったのではないかとも思う。

 iTunes Uという海外の大学の講義が無料で見られるサービスが始まったとき(2007年?)も、これはすごいと思ったけど、けっきょく眠気が抑えられず、すぐに見なくなった。その後教育業界ではMOOCという遠隔講義の仕組みが盛り上がったけれども、やはり一方通行の情報には身が入らずあまり注意を払ってこなかった。

 それが、30超えた今になってみると、俄然面白く感じる。たぶん大学の講義内容がいきなり面白くなったわけではなく、自分が変わったのだと思う。

 大学に通ってだらだら講義を受けていたときより、明らかに自分の知識欲が強くなっている。問題意識といってもいいかもしれない。世の中こういうとこおかしいんじゃねえかとか、自分はもうちょっとこういうことを知ってないとまずいんじゃねえかとか、そういう知識への関心が、あくまで前に比べればだが、はっきりしている。もちろん曲りなりに一度卒業して基礎を身に着けたことが前提としつつも、大学を離れて数年間でようやく大学で学ぶ姿勢がついてきたような感じだ。別に学生時代だって学びたいと思ってなかったわけでは全然ないけど、年の功というか、10年分引き出しが増えている。講師の言っていることに基づいて、連想を広げられるポイントも今のほうが多いのだ。残念ながら脳みその計算速度やスタミナは落ちてしまっているけど。

 おそらく30歳前後というのは学位を追加しに行くにはいい時期なのだと思う。同年代の友人もいま修士を取りに行っている人が多い。思い出してみると、私のいたゼミにもそのくらいの年齢の博士課程のお兄さんお姉さんが幾人もいて、社会経験に裏打ちされた見解をたくさん提供してくれていた。私は今のところ大学に戻りたい気はあんまりないけど、なにかの方法で腰を入れて学びなおしたいとは思う。まずは引き続きオープンアクセスの講義を見てみて、もっと勉強したい気が起きるかどうか、しばらく自分を観察してみたい。

 

 あと、自分の変化じゃなくて、以前の講義動画と比べて変わったなと思ったのは、再生速度を変える機能がついたこと。これものすごい大きくて、大学の先生ってたいてい間違いを避けるためもあって、ひとことひとこと噛みしめるように訥々と話すけど、それがめちゃくちゃ眠い。でも、今のオープンアクセスのサイトにはだいたい早回し機能が実装されているようで、1.4倍とか、場合によっては2倍の速さで聞くことができる。こうするとどんな朴訥な喋りも、半ばアジ演説のような熱気あふれるものになり、ぐっと引き込まれる。90分講義でずっと画面を見ているのはつらいけど、エキサイティングな早口の語りを1時間で見終えられるなら、炊事と食事、片付けを合わせたくらいの時間でひとコマ消化できる。(ながら視聴でこなせるのは入門講義だからだろう)

 ライフハックという言葉は嫌いだけど、これは自分にとってかなり画期的な技術だと思う。学生時代のあの講義もあの講義も、早回しボタンさえついていればもっと集中して聞けたのになと惜しい気がする。