カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

アメリカ先住民のお祭り

 アメリカ先住民のお祭り―パウワウ(Powwow)―が開催されると聞き、見に行った。

 夕方4時ごろ、会場になっている公園に車を乗り付けた。エンジンを切ると早くもドンドコドンドコ太鼓が聞こえてくる。あまり広くない公園の入場ゲートをくぐると露店が並んでいて、ネイティブ・アメリカンの手工芸品や衣服を売っている。後で見ることにしてとにかく太鼓の音の方に歩いていくと、広場にぶつかった。

 広場では「これぞ」という装束に身を包んだ人たちが輪になって、まさに踊っている最中。

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 踊っている最中、というか朝から晩までずっと踊っているらしい。

 写真のように日よけのテントが並んでいて、ボーっと踊りを眺めていたり、友だちとおしゃべりしていたり、はたまたダンサーがすごい羽飾りを付けたまま座って休憩していたり、わりと皆さん適当に過ごしている。運動会の客席というか、秋祭りのときの神社の社務所というか、知り合い同士の落ち着いたハレの雰囲気。

 踊りは音に合わせてステップの組み合わせを繰り返していく単調なものだが、力強くて目が吸い付けられる。この日のために全米およびメキシコから踊り手が集まったらしく、いろいろな装束の人がいる。いずれも相当の費用と時間と祈りを込めたことがすぐに分かる出来。誇り高く着こなしている姿を含めて、「カッチョイーーー」と内心叫びまくった。みんな普段は社会の中でアメリカ人やメキシコ人として仕事をしたり学校に行ったりしているのが、この日だけ(だけではないだろうけど、特にこの日)は自分のルーツに立ち返ることができるというのはとても貴重な仕組みだと思う。真剣な顔で踊っている人も、楽しくてしょうがない感じに笑顔がこぼれている人も、それぞれ素敵だった。

 予習のために覗いた説明サイトに「パウワウは過去の遺物ではなく、今を生きている」的なことが書いてあったが、その通り、スニーカーを履いてる人がいたり、ハロウィン衣装を流用したのでは?という部分があったり、ちらちら現代が垣間見えるのも面白かった。また、ダンサーの性比はほぼ男女半々なのも、すぐれて近代的な現象らしい。ただ、もちろんこれはこの集まりが今風の観光客向けイベントになってしまったということではなく、その証拠に、ダンサーの人たちはずっと輪の中心を向いていて、輪の外で見ている人たちにはあまり関心を払っていない。むしろ自分の内面や、目に見えないものに注意を払っているように見える。前述のサイトにも「見て楽しむのは大いにウェルカムだが邪魔すんな、リスペクト必須」とある。

 画像では全く伝わらないが、踊りのあいだじゅう太鼓と歌が切れ目なく響いていて、儀式の中でとても重要な位置づけになっているようだ。太鼓は、車座の人々が中心のひとつを息を合わせて打つタイプと、一人で立って打つタイプを見た。特に後者は和太鼓とそっくり。木の胴に革を張った構造から、胴をたたく「カッカッカッ」という音まで一緒。ダンサーが足につけている、植物の実を使った鈴が一歩踏むたびにシャワシャワ鳴って、それもなんだかクマゼミの声のよう…。

 日本との共通性ということでいえば、この鳥の人、かなり目立っていて、これは東北地方の鶏舞と同根じゃないか!?と勝手に妄想してしまった。

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 もちろん1万年とか2万年も前にアジアから渡っていった文化との間に、そんなはっきりした共通性があるわけはないのだが、会場にいるあいだ、とても懐かしい気分になったのはたしか。日が暮れた頃、「見てる人もみんな輪に入っていいですよ〜タイム」があって、盆踊りそのものだったし(下写真)。そそそーっと輪に入って太鼓と歌で何周か周らせてもらったが、楽しかった。友だちや親戚がいてヤアヤア元気してたかいみたいなやり取りがあれば、きっともっと充足感があるだろうな。

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 パウワウは季節を問わず各地で行われているらしいので、都合が合えばまた行ってみようと思う。

 ここで詳しく書く力はないが、楽しいだけではない複雑な問題を含んだ空間でもあった。露店で売ってるTシャツでは先住民に対する収奪と迫害のさきがけになったコロンブスが矢ぶすまになっていたり、「俺たちゃ1492年からテロと戦ってるんだ」とデカデカと書いてあったりする。ちょっと欲しかったけど当事者でもないのに冗談では着れない感じ。一方で運営本部のテントには大きな星条旗が翻っていたりもしていて、いろいろ勉強したり話を聞いたりしてみないと、これはなかなか難しいぞ。

 

(踊りは静止画撮影OKでした。念のため。)