カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス生活の日記だったけど、今は大阪にいます。

2018-01-01から1年間の記事一覧

2018年に読んだもの振り返り②『日本語が亡びるとき』

今年読んだものセレクション第二弾は、水村美苗『日本語が亡びるとき』。ここ数年ちょこちょこかじってきた文化論の中でも、いちばん心揺さぶられた。感情を動かされたのは小説家としての著者の腕によるかもしれないが、別にセンチメンタルな叙述に終始する…

2018年に読んだもの振り返り①『アメリカ自然思想の源流』

今年はあまり本を読まなかったが、いくつか印象に残っているものはある。 まず柴崎文一『アメリカ自然思想の源流』。一時期は毎週のようにアメリカの自然に遊んでいた私にとって、そうそうまさに今それが知りたいのだというタイトルである。米国立公園の仕組…

アニメ版バナナ・フィッシュをアメリカで観る

最近の楽しみはアマゾンプライムでやっている「BANANA FISH」のアニメである。週に1話ずつアップされるのを、シャツにアイロンをかけながら観ている。とても原作を大切にしたつくりで、内容はだいたい覚えているのにハラハラドキドキさせられる。何よりアッ…

【読んだ】向田邦子『思い出トランプ』

向田邦子の短編集を読んだ。表題の通り、トランプと同じ13編が収録されている。 向田邦子の作品を読むのは初めてだ。登場人物は皆ぬぐえない過去の暗い思い出や、後ろめたさを引きずりながら、どうにか生きている。あまり大きな事件は起きず、なんとなく昔あ…

日本の大学の留学生へのアフターケアについて

少し前のこと。 仕事が終わってオフィスを出ると、男性二人組がこっちを見ていた。「お前日本人か」と呼び止められる。なんだなんだと内心で警戒スイッチをオンにしながら、そうだけどと答えると「日本に郵便を送りたいんだが、どこで切手を買えるか知ってる…

砂漠について

ロサンゼルス近郊の野山で遊ぶようになって分かったのは、乾燥地には乾燥地なりの命の輝きがあるということだ。 日本語の世界では「緑が多い」というフレーズには自然が豊かだというニュアンスが付与されており、その対極に「死の砂漠」といった表現がある。…

角煮

大都会ロサンゼルスの片隅で、ときどき角煮を作る。私の住むコリアタウンは豚バラのブロックが安く手に入るのだ。多文化コミュニティ様様だ。自然から人間が得ているあらゆる恩恵をひっくるめて「生態系サービス」と言ったりするが、この豚肉も「文化の多様…

枕頭の書

『宮沢賢治詩集』を最近またよく読み返している。かれこれ15年くらい身近に置いているが、ページを開くたびに鮮烈な字句が目に飛び込んでくる。詩の一編一編が強すぎて少しずつしか読めないのと、読んだ先から忘れてしまうからである。あるいは私が少しずつ…

日曜午後のメモ

リトルトーキョー、交差点に面したカフェ。 窓際のスツールに座っている。 ブレンドコーヒーは酸っぱくて、甘栗のような後味。 テーブルの上には考えのまとまらないノート。 箇条書きと、因果関係の曖昧な矢印が散らばっている。 黒のロングドレスの女性がカ…

物量のトマト

「10缶で10ドル!」というセールをやっていたので、トマトの缶詰を10個も買ってしまった。我に返って途方に暮れつつ、頭の中では「トマト缶十番勝負」と墨文字が黒々と踊っている。戦いが始まったのだ。だって、ふだんそんなに使わないもの、ひとり暮らし。…

はじめてmixiやってからもう十年

そういえば、SNSというものに手を出してからもう10年以上経っている。大学入って気持ちがふわふわしている頃に、サークルの勧誘とかで先輩が「みくしーやってる?」とか聞いてきて、それなんですかと聞いても「インターネットで友達に日記を見せる仕組みだよ…

世界はせまい(かつ広い)

連休だったので メキシコ行ってきた。 現地駐在の人が一緒に遊んでくれたおかげで、3日間の弾丸日程ではありえないほど満喫できた。その旅行の中身はまた今度にするとして、ちょっとしたおまけエピソード。 最終日の今日、滞在中世話を焼いてくれた人の仕事…

LAホロコースト博物館

近所で前から気になっていた博物館に行ってみた。 その名をロサンゼルス・ホロコースト博物館*1という。ユダヤ人大虐殺を生き延びた人たちが、犠牲者の遺品などを集めて1961年につくった施設である。パン・パシフィック公園という、とてものどかな公園の一角…

【映画】Eighth Grade【中二はつらいよ】

先月はいろいろあって全然ブログに向かえなかった。というか途中からアメリカを離れていたので、ブログタイトルの「カリフォルニアの本と虫」が体を成していなかった。いろいろが終わってアメリカに戻って、一週間経つが、時差ボケとカルチャーショックの再…

火あぶり

摂氏42度。 本日の最高気温である。 体温と同じかよ〜、どころではない。熱めの風呂である。 ここまで来ると目を開けていられない。今日はけっこう風が吹いていたが、風と言っても並の風ではない。アチチッというレベルの熱風で、ストーブの吹出口に立たされ…

祝日は爆発だ

今日はアメリカの独立記念日だった。 この祝日に合わせて連休を取る人も多いらしく、数日前から若干道路の交通量が少なかった。 私も職場が休みなので、昼間は山に行くことにしており、夕方からは海辺で花火見物に誘われていたが、朝起きると微妙に足が痛い…

すごくおいしい頭スープ(鮭ver.)

「魚の頭と白い野菜を塩味で煮ると美味い」という真理。 金のない学生時代、深夜のスーパーで150円の鯛の頭がおつとめ品でさらに半額75円になっているのを見て、なんとかこれが食えないか…と考えた。それで、魚なら塩焼きが美味いけど、塩で焼いて美味いなら…

【W杯】コリアタウンでパブリックビューイング【韓国vsメキシコ】

朝からパブリックビューイングを見てきた。サッカーワールドカップの韓国×メキシコ戦。 サッカーを見るのは好きだが、今年のワールドカップは全然追えていなかった。いかんせんテレビを契約してない(Amazon PrimeとYoutubeだけで生きている)ので、映像が目…

最近見たアニメ17本

最近やたらアニメを見ている。 アニメは時間を取られるのでこれまで10年ほど避けてきたけど、海外のひとり暮らしで時間ができたので、洗濯物を片付けるときなど、暇を見つけてはテレビをつけるようになった。せっかくたくさん見たので、上半期分の感想をここ…

マイク・シノダのライブを見に行けない話

市内のレコード屋でマイク・シノダのライブをやる、という情報が流れてきた。 Live Shows at Amoeba - Upcoming Shows - Mike Shinoda マイク・シノダ。なんか聞いたことある名前だと思ったら。 リンキン・パークの人だ。 すごいなロサンゼルス。 その日は、…

果物事情とアレルギー

果物売り場にアプリコットが出ていた。どうやって食べるのか分からないが、クルミ大の実を買い物客が慎重に選んで袋に詰めている。黄色がかったオレンジがみずみずしい。さくらんぼも、日本で「アメリカンチェリー」と呼ばれている黒っぽいやつ以外に、もう…

嗜好品のある暮らし

今朝は自宅でコーヒーをいれてみた。 スーパーで買った粉と水をマシンにセットしてボタンを押しただけだが、なかなかうまい。いつも二度寝の誘惑に負けまくりながらだらだら出勤準備をするのに、苦味と香りのおかげで雑念が払われるようで、素敵だ。 考えて…

アメリカの銃問題について、数字メモ

またローカルラジオで聞いた話から。 今日は、どこだかで学校を新しく建てているという話。広報担当だかの男の人が招かれて、保護者の動きや建物の特徴についてしゃべっている様子。ほのぼのとした話題かと思いきや、おそろしくアメリカ的だった。 学校の人…

Kindleで古典のたたき売り?

読んでる本にイギリスの詩人ジョン・キーツのことが出てきたので、アマゾンで書籍情報を調べてみた。びっくりした。 Kindle版、安すぎない? 紙の本で1,400円相当が、電子版だと90円くらいである。ほとんどタダじゃん。 私自身は液晶画面で詩を読むという行…

水不足について

ローカルラジオで水不足の問題を取り上げていた。 夏場に水が足りなくなるので節水しましょう、という話だった。かなり深刻そうな様子である。使用制限かかったら困るなーと思いながら聞いていた。 とはいえ、こんなに雨が降らないのにこんなに都市が大きく…

竹細工

これ読んだ↓ Modern Twist: Contemporary Japanese Bamboo Art 作者: Andreas Marks,Margalit Monroe 出版社/メーカー: Intl Arts & Artist 発売日: 2012/11/20 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 数年前にアメリカ国内を巡回した竹細工…

LA下町格差雑感

今日はダウンタウン(街の中心部)に用があって出かけた。 日系人街のリトル・トーキョーで博多ラーメンを食って、目的地のギャラリーはそこから南に2kmくらいだったので歩いてみた。 いちばん荒れている場所は避けたつもりだったが、かなり殺伐としている。…

アメリカの光と影、雑感

アメリカに来る前に本多勝一の『アメリカ合州国』という本を読んだ。本多はこの本で、アメリカの光と闇は不可分であり、両方合わせてこの国の本質を形作っているということを言った。自由と民主主義の光に対して、貧富の差や人種差別の闇は、影のように付き…

夕焼けと椰子の木

今日は夕焼けをゆっくり眺める時間があった。ここの人々にとっては、椰子の木の向こうに沈む夕陽が、いわゆる原風景になっているようだ。街の西側が全部太平洋で、高い建物もほとんどないので、沈む夕陽のオレンジは人々の視界をまっすぐオレンジに染める。…

ロサンゼルスでようやくいい感じの本屋を見つけた

ついに良い本屋を見つけた。 このブログ、「本と虫」と名付けておきながら、ほとんど本のことは書けていなかった。気に入る本屋がずっと見つからなかったのだ。もちろん英語を読むスピードが遅いせいで、本が読めてなかったのもある。しかし、参っちゃうくら…