読書
ちょっと仕事が忙しくなってきたら、また変な夢を見た。 自分はなぜか大学院生だという設定。架空の学会に向けてよく分からない発表予定を入れられ、よく知らないパネルディスカッションの司会もやれと言われ、え〜どうしよう困った困ったと言って準備に手が…
出井康博『ルポ ニッポン絶望工場』を読んだ。本の背骨になっているのは、ベトナム人留学生の違法就労(違法雇用と言ったほうがいいか)の問題に対する、足で稼いだ丁寧な取材だ。送り出し現地のブローカーから、日本の官僚・政治家までつながったピンハネの…
「街道をゆく39 ニューヨーク散歩」を読んだ。 BLMに関して脳みそに即時的な情報を取り込みすぎて、かなり疲れていた。アメリカについてもう少し落ち着いた言葉で書かれたものを読みたいと思った。ほんの気分転換のつもりで手にとったのに、一気に読んでしま…
年末のなんだかんだで更新が切れてから一ヶ月たってしまった。肩慣らしに「なんだかんだ」を振り返ってみたい。 まず、クリスマス前に若い友人が訪ねてきてくれた。三十路そこそこの私が若いというのだからものすごく若い、十代の人だが、「後輩」と呼ぶのも…
風邪でダウンしてる間に2週間経ってしまったが、11月の終わりは感謝祭だった。日本にいると全然ピンと来なかったけど、感謝祭というのは要するにお盆とか正月とかそういう、家族の集まる連休である。この行事の起源を振り返ると、先住民にとっては虐殺と収奪…
ここ2ヶ月ほど、寝る前にル=グウィンの詩を読んでいた。「So Far So Good: Final Poems: 2014-2018」、昨年亡くなった作家の最晩年の詩集だ。9月にポートランドに行ったとき、独立系書店の雄Powell's City of Booksで買った。彼女がまさにそのポートランド…
LA北部、ノース・ハリウッドまで出かけたついでに前から気になっていた本屋に寄ってみた。 あやしい 古代ギリシア詩から店名を取ったThe Iliad Bookshop。ブロック造の建物にペンキで絵が描いてあるせいでなんともいえないチープさが醸し出されている。ドア…
いやー、めっちゃんこ面白かった。否、面白かったという以上の何かだった。何だこれは?すげえ小説だ。町田康の小説はすげえ。どこを切り取ってもどうでもいいおふざけが書いてあるんだけど、どこを切り捨てても全体は成り立たないようにも思える。 時代劇の…
こないだ「山月記」を読み返したことを書いたが、その後同じ文庫に収録されていた「名人伝」「弟子」「李陵」も読んだ。いずれも中国の古典に大胆に肉付けした短編・中編だ。初めて読んで、面白かった。 「名人伝」は弓の名人を目指す主人公を通じて老荘思想…
ブコウスキーという人の『Hollywood』という本を読んでいる。しばらく前から一日に2、3ページずつ読み進めていて、おそらく年内には読み終わるのではないかと思う。そうするとこの本が私にとって「初めて読み通した大人向けの英語の長編小説」ということに…
日曜。 昼頃起き出して、洗濯して飯を食ってアニメ見て…と前日とほぼ同じ展開。昨日は冷凍ピザだったので、今日は健康的に白菜と鶏を煮る。最近仕入れた柚子胡椒がたいへん合う。軽く掃除などしていると小腹がすいた。さっきの鍋にうどんを入れたらこれまた…
オノ・ヨーコの'EVERYTHING IN THE UNIVERSE is UNFINISHED'読了。 表紙が不気味 アートブック、と呼べばよいのか、絵と詩と短編小説のようなものと、読者への短いメッセージがつれづれに編み込んである。去年出た本で、わりかし新しい。タイトルは「この世…
『ふたつの日本』読了。これも年始に日本で「今読まねば」と買い込んだうちの一冊。私はもともと人や文化の移動に関わる仕事をしている上に、今は海外赴任によって「外国人労働者」の身となっている。日本における「移民」の現状認識のために書かれた本書は…
去年出版され、今年の年明け頃に生き物界隈で話題になっていた『ニホンオオカミの最後』。正月の帰省のときに八重洲ブックセンター本店で買ったまま積んであった。 著者は東アジアを股にかける動物ノンフィクション・児童文学の書き手。知らなかったけど略歴…
ずいぶん前、とあるコンベンションで「Korean Literature Now」という広報誌をもらった。韓国文学翻訳院という韓国の政府系機関が出しているもので、非常に充実した内容だ。人気作家のインタビューや、詩の掲載、文学研究者の寄稿など、手に取りやすい薄さな…
宮部みゆき『模倣犯』を読んでいたら週末が終わった。 ハードカバー上下巻1400ページほどを一気読みしてお腹いっぱいである。半年ほどの連続殺人事件の経過を違う視点から何度もなぞる構造になっているのと、あらゆる脇役に物語が描き込まれているのでとにか…
上山春平編『照葉樹林文化―日本文化の深層』を読んだ。これは上山(哲学)が音頭をとったシンポジウムの記録で、中尾佐助(植物学)、吉良竜夫(生態学)、岡崎敬(考古学)、岩田慶治(文化人類学) という錚々たる京大閥の面々が顔を揃えている。稲作伝来…
これまで谷崎潤一郎は教科書に載っていた『陰翳礼讃』くらいしか読んだことがなかった。去年たいへん面白く読んだ『日本語が亡びるとき』で水村美苗が日本近代文学の重要性をこれでもかと強調していたこともあり、積ん読にしていた『春琴抄』を読んでみた。…
武蔵国出身者として非常に興味深い本だった。実家の土蔵に貼られた一枚の護符から、文書の記録や古老のインタビューを頼りに辿りに辿って関東一円の山岳信仰を掘り起こし、神秘と驚異相半ばしたニホンオオカミに向き合った先達の姿に思いを馳せるプロセスが…
冒頭、「二十世紀はコンクリートの時代であった」と隈研吾は言う。部材の劣化や素材の性質を無視して、自由かつ安価かつ即時的に建築家のイメージを具現化できるコンクリート造という手法が、地縁・血縁、すなわち時間的なつながりから人々を切断していった…
今年読んだものセレクション第二弾は、水村美苗『日本語が亡びるとき』。ここ数年ちょこちょこかじってきた文化論の中でも、いちばん心揺さぶられた。感情を動かされたのは小説家としての著者の腕によるかもしれないが、別にセンチメンタルな叙述に終始する…
今年はあまり本を読まなかったが、いくつか印象に残っているものはある。 まず柴崎文一『アメリカ自然思想の源流』。一時期は毎週のようにアメリカの自然に遊んでいた私にとって、そうそうまさに今それが知りたいのだというタイトルである。米国立公園の仕組…
向田邦子の短編集を読んだ。表題の通り、トランプと同じ13編が収録されている。 向田邦子の作品を読むのは初めてだ。登場人物は皆ぬぐえない過去の暗い思い出や、後ろめたさを引きずりながら、どうにか生きている。あまり大きな事件は起きず、なんとなく昔あ…
『宮沢賢治詩集』を最近またよく読み返している。かれこれ15年くらい身近に置いているが、ページを開くたびに鮮烈な字句が目に飛び込んでくる。詩の一編一編が強すぎて少しずつしか読めないのと、読んだ先から忘れてしまうからである。あるいは私が少しずつ…
これ読んだ↓ Modern Twist: Contemporary Japanese Bamboo Art 作者: Andreas Marks,Margalit Monroe 出版社/メーカー: Intl Arts & Artist 発売日: 2012/11/20 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 数年前にアメリカ国内を巡回した竹細工…
アメリカに来る前に本多勝一の『アメリカ合州国』という本を読んだ。本多はこの本で、アメリカの光と闇は不可分であり、両方合わせてこの国の本質を形作っているということを言った。自由と民主主義の光に対して、貧富の差や人種差別の闇は、影のように付き…