カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

【読んだ】望月優大『ふたつの日本』

 『ふたつの日本』読了。これも年始に日本で「今読まねば」と買い込んだうちの一冊。私はもともと人や文化の移動に関わる仕事をしている上に、今は海外赴任によって「外国人労働者」の身となっている。日本における「移民」の現状認識のために書かれた本書はまさに必読だった。

 「移民」とひとくちに言ってもいろいろな定義がある。留学生、技能実習生、日系人、永住者、特別永住者非正規滞在者…様々な用語を眺めているうちにわけが分からなくなってくる。本書はまずそこを丁寧に整理してくれているのがありがたい。「どういう移民が」「いつから」「どのくらい」いる(いた)のか?という基本すら私はよく分かっていなかったので、統計や制度史をきちんと使って解説してくれる本書はとても参考になった。こうした基本事実をざっと一望できる本が、「特定技能」制度の開始とほぼ同じタイミングで出たということは非常に重要だ。

 それから、「技能実習」「特定技能」「入管による収容」といったホットイシューについてもどんな制度で何が問題かという概要を押さえている。報道で問題があることは何となく知っていても、なぜ今話題として浮上しているのかは理解不足だったので助かった。共通する問題構造まで指摘している点も勉強になった。

 淡々と事実の解説に務める本書の中で、一転して終章は「熱い」。10ページちょっとの分量だが著者の問題意識が真摯に表明されている。「これは移民ではありませんよ」という建前の裏でなし崩し的に人の受け入れを拡大し続けてきた日本のやり方が「人間の否認」であり、それが外国人だけに及ぶものではないことをきちんと指摘していて、我が意を得たりという気持ちになった。

 タイトルは「ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実」で、これも秀逸。移民の話だけなら「日本の移民問題」でもよかったかもしれないが、「ふたつの日本」とすることで、これが単に移民の話だけを扱った本ではなく、分断された私達の社会についての本であることがうまく示唆されている。

 最後の6行を褒めるレビューが多いけどそれは実際に読んでもらうのがいいだろう。それとは別に共感した箇所として「はじめに」から少し引用しておきたい。

この国はすでに数え切れないほどの複数性と複雑さを抱え込んでいる。純粋無垢な「ひとつの日本」に戻ることはできないし、実のところ戻る場所など元から存在すらしなかったのだ。故郷(ホーム)は孤独に懐かしむものではなく、たまたま居合わせた人々と一緒になってつくっていくものだと思う。(P.10)

 

 関心のある人で輪読したいなあ。

 

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久しぶりに赤ペン引きまくり

 

 

 

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書)

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書)