カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

サンフランシスコ散歩(歩道の落書き)

 サンフランシスコの歩道を下向いて歩いてたら、こんな落書きがあった。

 

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 「DEPORT TECHIES」テック野郎どもを追い出せ、といった意味合いか。路上や信号の柱に社会への不満が殴り書きされているのは珍しくないが、よそ者には意味が分からないものがほとんどだ。そんな中でこれは珍しくローカルな文脈が読み取れて面白い。

 Deportという単語はおそらく「Deport Trump, Make America Great Again」という反トランプのスローガンからの引用だ。不法移民の強制送還を進める大統領に対して「トランプをまず追放しよう」と皮肉ったフレーズである。私が見つけたこの落書きでは、非難の対象がトランプからTechies、すなわちシリコンバレーのIT企業の人たちに置き換えられている。

 サンフランシスコでは全米で最悪レベルに家賃高騰が進んでいて、その大きな原因がシリコンバレーの高所得労働者の流入だと言われている。三方を海に囲まれた狭い街で、初任給1000万円以上の人たちがばんばん部屋を借りるもんだから大変である。あるソースによると2019年春の時点で、ワンベッドと呼ばれる「寝室+リビング」のアパートの平均家賃は約40万円/月である。

 ロサンゼルスの家賃も高いが、さらにその5割増しほど高い。庶民がまともな部屋を借りることはありえないような状況だ。その結果、ホームレスが大量発生している。一時収容施設ですら家賃が高すぎて開設できない。住宅の需給バランスが狂ってしまっていること、そしてそれを是正する政策が機能していないことで、街中が苦しんでいるのだ。

 「DEPORT TECHIES」はこうした問題を抱えた人々の恨みつらみをたった2語に込めた優れたコピーである。誰が書いたのか知らないが、私のようなふやけた外国人もハッとさせる力がある。

 これを見つけた界隈にはTwitterUberの本社があり、観光・ショッピングスポットの固まった中心地だが、ホームレスもものすごく多い。前に来たときはTwitter本社の前に注射器が転がっていた。サンフランシスコ、文化的魅力にあふれていてアメリカの都市として一、二を争うくらい好きだが、闇もまた深い。