カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス生活の日記だったけど、今は大阪にいます。

連休の読書

 風邪でダウンしてる間に2週間経ってしまったが、11月の終わりは感謝祭だった。日本にいると全然ピンと来なかったけど、感謝祭というのは要するにお盆とか正月とかそういう、家族の集まる連休である。この行事の起源を振り返ると、先住民にとっては虐殺と収奪の歴史の象徴と見なされてもいたりして複雑なのだが、とにかく毎年ものすごい渋滞とセールが繰り広げられる。

 独居者にはあまり関係がないので、いつも持て余す。旅行に行こうにもピーク価格で不経済だ。1年目は砂漠で過ごし、2年目はよせばいいのに大セールで浮かれるアウトレットモールに突撃した。3年目となる今年はもうめんどくさいから、ひたすら家にこもって本でも読もうかなと思っていた。そしたら風邪ひいた。

 だいいち家にこもって本でも読もうかなという考えが甘かった。家にこもると案外本って読まないもんである。ごろごろしながら本をめくっていると、すぐ眠くなってしまう。はっと目が覚めたら日が暮れていて、夜は眠れないまま無駄にゲームをしてしまい、生活時間が狂って、そりゃ病気にもなろうというものである。本当はせめて明るい時間にカフェにでも出かけて、背筋を伸ばしておかなければいけなかった。(連休で休みのカフェも多く、始末に悪い)

 というわけで、意気込んでいたほど読めなかったけど、宇田智子『本屋になりたい―この島の本を売る』はとても面白かった。本屋を始めようと思ってから実際に起業して、店主として日常を回す、一連の流れをこんなに平易に気負わず書いた本があるだろうか。いや、あるのかもしれないけど私は知らない。著者は「先のことはわかりません」と書いているが、ぜひ私が沖縄に行くときまで続けてほしい。沖縄のことは学生時代に半可に(本当に半可に)勉強したせいで、どうもその後足が遠ざかっているんだけど、この本のおかげでまた島々に気持ちが向いてきた。全国最小と称される「市場の古本屋ウララ」さん、帰国したら行ってみたい本屋のひとつ。

 『本屋になりたい』は著者がファンだという高野文子が挿絵を寄せている。主張の少ない線画が非常に素敵だ。これを良いきっかけにして、積ん読にしておいた高野文子の『ドミトリーともきんす』を続けて読んだ。「朝永振一郎牧野富太郎中谷宇吉郎湯川秀樹という日本の科学者たちが学生として住んでいる寮」を舞台にした短編漫画なのだが、ちょっとものすごかった。それぞれの科学者の著作を引用しながら、独自のキャラクターとして再構築し、理学のエッセンスをかわいく洒脱な絵とストーリーで説明しながら、親子の狂言回しを介して起承転結をつける。各編5ページで。どうやったらできるのか、薄っぺらい造本の中で時空がねじれてるのじゃないかと錯覚する作品だ。

 どこにも行かずに体調も崩したけど、『本屋になりたい』と『ドミトリーともきんす』でたしかな収穫を得た先月の連休だった。

 

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