カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

LA本屋めぐり(The Iliad Bookshop, North Hollywood)

 LA北部、ノース・ハリウッドまで出かけたついでに前から気になっていた本屋に寄ってみた。

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あやしい

 古代ギリシア詩から店名を取ったThe Iliad Bookshop。ブロック造の建物にペンキで絵が描いてあるせいでなんともいえないチープさが醸し出されている。ドアを開けたら水晶占いの老婆が座っていそうだ。

 意を決して入ってみると、思った以上に正統的な古本屋だった。床から天井まで隙間なく本が並んでいる。近頃流行りのおしゃれな雑貨が並んでいるわけでもなく、コーヒーの飲めるスペースがあるでもなく、とにかくすごい量の本が詰まっている。そして広い。

 入り口すぐはサブカル系の棚。分野ごとに段ボールに殴り書きの見出しが差してあるのだが、「サーカス」とか「チェス」とか、え、それで見出し作るほど本があるの?と戸惑う品揃えだ。音楽の棚なんかビートルズストーンズでそれぞれ何百冊か置いてある。特に印象的だったのは映画本のコーナーで、本棚3列くらい、それで一軒の本屋ができるくらいの物量だ。ハリウッドという土地柄だろう。私は価値が分からなかったが、好きな人には宝の山だろう。

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親しみやすい混沌

  サブカルコーナーで既に圧倒されてしまったが、これはまだ店の表側3分の1ほどに過ぎない。その奥にはこれまたすごいボリュームのアート本コーナーが広がって、その奥に本丸のフィクションの棚が待ち構えている。特にあてもないまま画集や写真集を眺めていると、「Japanese Art」のところでちょっと変なものを見つけた。

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目を疑う

 「日本美術における伝説」の横に、「LOVE BOX」。眞鍋かをり全盛期のフォトエッセイ。買取だとしても市場から仕入れたとしても経緯が気になりすぎる。いつどうやってここに来たのだ。店の人も何を考えてここに差したのだ。わからん。。。

 気を取り直して二束三文の画集をいくつか抜き出していく。店がでかいだけに、並べる本を厳選しているという感じではなく、玉石混交でガサっと突っ込んであるので、舐めるように見ていると次々に発見がある。

 本を抱えた片手がだんだん重くなってきてやばい切り上げようと思ったところで、また面白いものを見つけた。

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めちゃくちゃ重い

 「15 THIS IS JAPAN 1968」という大層な題のついた冊子。日本の自意識について前から関心があるので、内容をたしかめないまま直感的に買ってしまった。帰って調べてみると、1954年から1971年にかけて朝日新聞社英語圏に向けた日本の宣伝のために毎年出版していた雑誌のようだ。旅館の案内、芸術、文化、地方の風土、産業に至るまで紹介されている。日本文学翻訳のサイデンステッカーがエッセイを寄せているかと思えば、定置網漁業を解説したページがあったり、ごった煮が極まっている。ちなみに「これが日本だ」と題するこの書籍には沖縄県がまったく登場しない。たった50年前のこと。

 誰かこのシリーズについて書いた人はいるのだろうか。内容が雑多なだけに、全冊を分析したらちょっとした卒論のテーマになりそうである。ネット検索した限りでは、通巻で揃っているのはどうやら国会図書館くらいかも。朝日新聞のサイトを見ても何も分からなかった。どなたか情報を御存知でしたらお知らせください。

 

 本屋の話だった。

 

 店の奥までくまなく探検しようと思っていたのだが、「THIS IS JAPAN」を見つけたところでお腹いっぱいになってしまった。フィクションとグラフィックノベルの広大なスペースはほとんど見られず。

 こんなに底の知れない本屋だとは思ってなかった。心の準備ができてなかった。店員さんも何やら長時間お客さんの本探しにつきあっているようで、凄腕のオーラをまとっていた。また探索に来たい。

 

The Iliad Bookshop
5400 Cahuenga Boulevard
North Hollywood, California 91601