カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス生活の日記だったけど、今は大阪にいます。

2018年に読んだもの振り返り③(終)『宮本から君へ』

 すでに2018年は終わってしまってマヌケだが、振り返りをもう一本だけ。

 本をあまり読まなかったかわりに、マンガはかなり読んだ一年だった。食わず嫌いだったKindleを導入したのをきっかけに、300冊は読んだのではないかと思う。劇画狼さんの紹介を参考に読んだ『はぐれアイドル地獄変』『青猫について』『バイオレンス・アクション』『エリア51』はどれも抜群に面白かった。どれも美女が暴力をふるう話だが、美女が暴力をふるったら面白いに決まっている。「つばな」も劇画狼さんの活動で知ってハマった。『惑星クローゼット』はやばくてやばい、続きが気になりすぎる。

 『戦闘破壊学園ダンゲロス』は久しぶりに没頭して一気に読めたマンガだった。コミカライズの横田卓馬は『背筋をピン!と』で真っ当な青春モノを描くなあと思っていたのに、その前にこんな変態作品を手がけていたとは知らなんだ。『オナニーマスター黒沢』も彼の作品だと。上手だ…。

 マンガの話はキリがない。

 何と言っても年末に駆け込みで心底揺さぶられたのは、新井英樹『宮本から君へ』。主人公はサラリーマン「宮本」。下のサムネイルに見える通りひたすらまっすぐでいいやつなのだが、とにかくやることなすこと壁にぶつかり、打ちのめされまくる、という話だ。作者はインタビューで「どのマンガよりも主人公に優しくないマンガにしよう」と言っているように、「宮本」の幸不幸の落差が本当に激しい。私は最終巻を読み終わって一週間以上経つが、ひどい目に遭うくだりがあんまり辛かったので、まだ胃のあたりが重たい感じだ。

 それでも最後まで読み切ったのは、このマンガが全編真剣に生きている人間の姿で溢れかえっているからだ。脇役も全員、ただの引き立て役でなく、それぞれの人生を生きており、こんな気迫をぶつけられてしまっては読者としてとにかく一所懸命ページをめくるしかない。劇薬のような作品で、誰にでも勧めたいかというとそうではないが、私にとっては2018年いちばんの収穫だった。放心。