カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス駐在の日記です。2017年10月から

決着なき投票翌日に思うこと

 アメリカ大統領選挙、まだ結果出てないですけど「最初トランプが先行して、後からバイデン寄りの郵便投票が開票されるにつれバイデンが盛り返す」という展開は、事前に広く予想されていたことです。その旨事前に報道もされていたし、トランプ陣営ももちろんそれを知っていて、だからこそ郵便投票を妨害するためにコロナが深刻化してから色々な工作を仕掛けていました。現政権が郵政公社の予算を減らして配達網を劣化させたり、長官を自身の支持者にすげ替えたり、盛んに郵便投票の信頼性を下げるような発言を繰り返してきたのは、陰謀論でもなんでもなく、彼らが白昼堂々と実施してきた事実です。新聞のベタ記事としてよく報道されていました。
 それなのに日本語のインターネット世界では、開票当日のトランプ先行を受けて「トランプ大逆転!マスコミざまあみろ!」と言い出す人がたくさん現れました。現地では左右問わず「これは今回ぜんぜん分からんね」と言い合っていた段階です。これは何なんだろうか。何なんだろうかというか、私なりに答えはあるのですが、書いたら角が立つだろうなあ。ともかく一日ずっと考えています。繰り返しますが、トランプ先行は予測されていたことであり、それをもとに昨日時点で勝ち負けをどうこう言える材料ではなかったのです。
 以前オバマが勝ったときも、4年前トランプが勝ったときも、こういう現象は記憶がありません。今回特有の動きでしょうか。事実よりもセンセーショナルな臆断を優先するポストにすごい数の「いいね」がついているのを見ると、かなり不安を覚えます。事実と願望を区別しないトレンド。
 昨日の夜から、トランプはTwitterで盛んに「選挙に不正があった」という発言を繰り返して、Twitter社の運営に削除されたりしていますが、これも事前に予測されていた展開です。どういうふうにアメリカ社会が事態を収拾するのかはこれからの問題ですが、トランプが不正を言い立てるということ自体は前から予測されていたことで、トランプ陣営の予定表にもいくつかの選択肢のひとつとして入っていたはずです。不正を見つけたから騒いでいるのではなく、騒ぐ予定があったからそれにしたがって騒いでいるということです。
 不正選挙だと言い募ることはトランプ陣営にとって合理的な行動であることは間違いなく、別にそれを止める権利は私にはありませんが、少なくとも私の言葉が届く日本語話者の皆さんには「我々がその選挙戦略に付き合う筋合いはありませんよね」と申し上げておきます。開票の動向も、両陣営の反応も、概ね事前の予測どおりに進んでおり、予想通りの進行の上でなお非常に微妙な接戦なので結果は最後までわかりません。素人が言えるのはここまでです。
 「隠された真実」はたいてい存在しないですし、私たちが知りうるくらいの真実は間違いなく当事者の方がよく知っていますし、私たちはふつうそういうものを「隠された真実」とは呼びません。また不正選挙という話題は、最近の日本ではむしろ左派サイドからよく出てきますが(なぜなら左派が負け通しだから)、少しでも組織で仕事をしたことがある人間なら不正選挙がいかに手間とコストのかかる大プロジェクトであるか、想像できると思います。国全体に広がる投票所で、世界の注目を浴びながら、何万・何十万のスタッフに秘密を漏らさせず、必要資材を調達・配置し、複数のチェック機構をすり抜け、それで狙った選挙結果を得る、そんなことはどんな組織にも不可能です。(どんな事務能力じゃい) そういうのがめんどくさいから、みんな買収に走ったり、メディアを使って事前の情報操作を一生懸命やるわけですよね。もし本当に最終的に票が好きにいじれる技術が存在するんだったら、それを手に入れた陣営は事前の選挙活動なんかおかしくてやってられないでしょう。
 ということで、昨日の時点で「トランプ大勝利」と言っていたり、これから「不正選挙だ」と言い始めたりする人については、その発言の自由を尊重しつつ、そっとミュートしていく所存。
 
 なんとなくですますで書いてしまた。