カリフォルニアの本と虫

ロサンゼルス生活の日記だったけど、今は大阪にいます。

帰省して嬉しかったこと

 子供の頃、定期的に母に連れられ病院に通っていた。その帰り道、時間が遅くなると、モスバーガーとか、普段食べないちょっといいもん食べて帰ることが多かった。うちからひと駅のカフェにもよく連れてってもらった。

 たぶん当時開業したばっかりだったけど、店内の調度品やメニューのたたずまいなど、非常に優しい感じに気が配られているのが子供心にもよくわかり、特別な場所だった。店は細い用水路沿いに立っていて、入店するには小さな橋でその用水を渡らなければならないのが、またささやかな異境感を演出しているのだった。ハヤシライスがとても美味であり、今でも私のハヤシライスの基準はこの店になっている。「キッシュ」なんていう舶来の食物を初めて口にしたのもここ。

 この日曜、帰省したついでにふらっと行ってみたら、なんとまだやっていた。「なんと」といっても、別につぶれたと思っていたわけではなく、冒頭の通院の習慣がなくなった後もずっと近くで暮らしていたから、営業を続けてらっしゃるのは知っていたんだけど、どうにもこんな素敵カッフェーに通うような青春時代ではなかった。ので、もう二十年はご無沙汰していた。私が高校生になったり大学生になったり貧乏したり失恋したり酒を飲みすぎたり更生したりしていた、その間も、この店はずっと変わらず素敵カッフェーとしてこの場所に経ち続けていた。その積み重ねに対して「なんと」という感慨が湧いたってわけ。

 小学生の頃よく来てたんですよ、などと馴れ馴れしいことは言わず、おとなしくコーヒーとスコーンを頼みました。大変おいしかったです。

 

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